プロジェクトストーリー
プロジェクト 01
エスシタロプラムOD錠
開発プロジェクト経験から
“次の一歩”へ
PROFILE
S.S
経営本部 製品企画部 製品開発グループ
グループ長
2023年入社
製剤の研究開発業務に従事した後、2023年より第一三共エスファで後発薬を主とする製品開発業務を担う。
H.T
経営本部 サプライチェーン企画部
SC企画・包装グループ 主査
2021年入社
メカトロニクス関係の研究に従事した後、包装業務に転身。2021年より第一三共エスファで後発薬の包装業務を担当。新製品の包装設計・デザイン作成、法規に沿った表示内容の確認、既存品の表示改訂を担当している。
SECTION 012019年に立ち上がったCDMO(医薬品開発製造受託会社)と協働した自社主導開発の第一号案件
S.S:
当社は不安障害の治療に用いられる「エスシタロプラム」の後発薬として、水なしでも服用できるOD錠(口腔内崩壊錠。水なしで服用できる錠剤)を開発しました。本プロジェクトは、当社がCDMO協働して自社主導で開発した後発製剤の第一号案件でした。私は、プロジェクトが立ち上がった2019年当時、第一三共の製剤技術研究所に在籍しており、技術面、開発面のサポートをお願いされてプロジェクトに参加しました。
H.T:
私は包装設計、表示デザイン、法規や社内基準への適合確認などを担当しており、本プロジェクトには入社直後に参画しました。最初は先任の担当者補助から入り、次第に私が主担当としての役割を担うようになりました。先発品のいい点は継承しながら、識別性や取り扱いやすさの向上を目指し、PTPシート(錠剤を1錠ずつ押し出すシート)やそれを包むピロー、包装箱の仕様を検討・具現化するのが私の役割です。薬事、品質、製造などの関係部門との調整、スケジュール管理を担い、包装仕様の取りまとめを行いました。
SECTION 02業界初の異形錠を開発
包装にもアイデアを詰め込んだ
S.S:
本プロジェクトでは、新しい取り組みを数多く採用しました。まず、本品の有効成分には強い苦みがあったため、苦みを覆うマスキング技術を取り入れる必要がありました。苦み成分の顆粒を被膜する方法を採用したのですが、被膜量が多いと錠剤内部に水が浸透しにくくなり、口の中で溶けにくくなってしまいます。苦みを感じさせないことと、口腔内で崩壊することのバランスをどう取るか、何度も製造と検証を繰り返しました。薬なので、実際に舐めてみて確かめるということができません。苦みを数値化し、評価の指標を作る時間も要しました。当社も、CDMOも初めてのOD錠開発でしたが、当時コロナ禍でもあり、コミュニケーションも対面ではできず、Webにて定期的に実施するなどの苦労もありました。
H.T:
OD錠としては業界初となる“瓦型異形錠”を開発したことも、本プロジェクトの大きな成果ですよね。
S.S:
そうです。錠剤がパラパラと崩れることなく、パッケージに入った状態でも手で軽く押すことで簡単に薬を半分に割ることができます。通常、口腔内崩壊錠は丸錠が多い中、開発したのは、側面が瓦型で割線が入った長円形状です。その実現が評価され、グッドデザイン賞をいただくことができました。
その後、国内外での学会・セミナー発表の機会もいただき、業界にはインパクトがあったかなと思っています。
H.T:
表示・包装面でも、たくさんのアイデアが詰め込まれています。まず、薬が半分に割られて2つになった後も、両方の錠剤の表面と裏面に製品名が印刷される技術を導入しました。次に、錠剤を包んでいるPTPシートに製造番号を刻印する際には、他社でほとんど用いられていないレーザープリント技術を使いました。これにより、製造番号がかすむことなく、はっきりと印字され、薬剤師など医療関係者が製造番号をすぐに確認しやすくなりました。忙しい現場で、ぱっと判断できることは大きなメリットになっています。
S.S:
最新技術をすべて詰め込んだ包装になっていますよね。まさに、「患者さんの笑顔、できることぜんぶ。」というコーポレートスローガンや、「誰もやらないなら、やってみよう」というモットーを体現したプロジェクトだったと思います。
SECTION 03迫る申請期日との戦い
だからこそ成功の達成感は大きかった
S.S:
後発医薬品ならではの大変さとしては、行政への申請と承認を受ける時期が、2月と8月の年2回に決まっていることです。承認を取らなければ上市できませんが、先発品と異なり後発薬では競合メーカーも同時期に多く参入してきます。実際に、今回のエスシタロプラム錠は承認取得時に9社が参入しており、同時期に発売されました。もし開発が遅れて申請や承認ができなければ、半年後まで待たなければならず、事業としてのロスは甚大です。私は、期日が迫る中、エキサイティングな状況を楽しんでいましたが、関係者はハラハラしていたと思います。
H.T:
「楽しめる」という余裕は、これまで数々の新薬開発を手掛けてきた経験があってこそですね。
包装サイドでは、前述の抗ウイルスコートの導入など新しい取り組みばかりだったので、コート材メーカー主催の勉強会を複数回開催してもらうなど、社内で理解を得るために奔走しました。PTPシートでは錠剤一つごとにバーコード表示をするなど、印刷会社さん泣かせなお願いもたくさんしましたが、常に細部まで妥協することなくこだわっている甲斐あり、薬剤師さんを対象としたアンケートでは非常に高い評価をいただいています。
S.S:
私はプロジェクト参画当時、新薬開発を行う第一三共に所属していたため、グループ会社といえど「後発薬開発に技術提供する意義」について、若手メンバーから問いかけを受けたこともありました。新薬と後発薬では役割や向き合う課題が異なり、後発品対策を若手に教育していましたので仕方ありません。
ただ、時代も変わり、私はこのプロジェクトを通じて後発薬に切り替わる医薬品市場の難しさとともに、医薬品産業の成長の可能性を感じました。前職の第一三共も、現在はグループ会社を中心にした連携や情報交換、外部活用が活発になっており、良い影響を与えられたのではないかと思っています。
SECTION 04自社主導の開発へ
新たなチャレンジを後押ししていきたい
S.S:
プロジェクトの成功と環境の変化を経て、自社主導の開発を進めていこうと今年度に「製品開発グループ」が創設されました。
より利便性の高い製剤の開発はもちろん、海外で開発され国内ではまだ販売されていない製剤の国内転用を自社技術で進めていくような開発がこれからは求められていくでしょう。そこには、大きなハードルがあります。
行政のレギュレーション、法規対応などを理解しながら開発を進めていく人づくり、組織づくり、環境づくりが、これからのチャレンジになります。
チャレンジすると、失敗したり、挫折を感じたりすることがありますが、新たな一歩として周囲・将来に与える影響は大きいと考えます。チャレンジできる人を応援します。
H.T:
包装チームでは、今回実施した技術を次の製品にどんどん反映させています。後発薬開発は、新たな挑戦に対してより寛容で自由度が高いんです。当社には、やりたいと手を挙げたことをスピーディに汲み取ってくれるカルチャーがあり、本プロジェクトでも包装表示に関して新たなルールを策定する際には、関係部門の担当者がさっと集まり、議論の末、具体的内容が決まりました。
私も若いメンバーのチャレンジをどんどん後押ししていきたいと思っています。
当社ならではの良さを大切にしながら、皆さんとも、使う人の目線でものづくりを進められたらうれしいですね。